第3回 ロジカル・ライティング ~目的に即した内容で,一読で読めるように書く~

以下は、『人事マネジメント』2016年7月号「ロジカル・コミュニケーションスキル実践講座」での連載記事(全6回)です。

質問
部下に,研修会社が主催する公開講座を受講させました。研修受講報告を提出させたのですが,日記のような報告が提出されてきました。ビジネスパーソンとして適切な報告に書き直しを指示しましたが,再提出された報告書もあまり変わっていません。どう指導すればよいですか?
回答
学んだ内容,今後の業務にどう活かすべきかを中心に記載するよう指導
全社員に,ロジカル・ライティング研修の受講を必須としておく

●はじめに

普段からメールを多用していても,報告書などビジネス文章を誤解なく書けるようにはなりません。自分が見たことや考えた過程をそのまま再現したり,不要な情報や冗長な表現が多かったり,結論が記述されていなかったりしています。
 また,不幸にして,論理的に書くトレーニングを受ける機会がなかった人が上司や先輩だった場合には,体系だった指導や適切なフィードバックが受けられず,自己流の悪い習慣が結果として定着し直せなくなるビジネスパーソンが実に多くいます。
 一読で,自分の考えを100%伝えるには,ロジカル・ライティング研修でそのスキルを学習することが最適です。日記のような事実再現型ではなく,一読で理解できる文章を書くためには,下記の7つのルールを学び,守ることがポイントです。

  1. 最初に総論を書く
  2. 段落ごとに情報を整理して書く
  3. 段落の先頭に要約文を書く
  4. 既知から未知への流れで書く
  5. 正しく並列して書く
  6. 一文では一つのことだけを書く
  7. 簡潔に書く

研修を企画する際には,文章を書く前提である「ロジカル・シンキング」や,次の「ロジカル・プレゼンテーション」と技法の連動が取れたカリキュラムにすると,効果的な研修体系になるでしょう。
 ルールを守っていない文章と守った文章を示します。その分かりやすさの差を確認してください。

●読み比べ1

 今回のご依頼のあった日記のような受講報告と,ルールを守ってリライトした報告書の2つを例示します。分かりやすさを確認するため,黙読,線を引かず,そして前の文に戻らないように読み進めてください。彼は,研修で何を学習したのでしょうか?

ディベート研修について(B)

氏名:A


 2 日間のディベート研修を受講した。自社には同期入社が私を含めて2 人しかいないので,多くの社員と議論する機会はなかなかありませんでした。今回は様々な業種から集まった多くの方々とグループを通じてさまざまな議をすることが出来ました。
また,他社の状況や業務方法等も伺うことが出来て,大変刺激を受けましたし,自分の自社・仕事に対する認識・想いを再確認することが出来たので,今後成長が出来るだろう。
 この研修ではグループで議論を頻繁に行いますので,自然に意見交換が出来ましたので,すぐにうち解け人脈を広げることができました。

この研修を通じて学んだ重要ことはコミュニケーションの大切さです。自分ではできる方だと思っていたんですが,グループで議論をして意見を集約して,意思統一を行う作業はけっこう大変でした。

実際の業務においてコミュニケーションが不十分で重要次項が伝達されていなかったり,意思統一がなされていないと大変な事態になるかもしれません。
タバコがディベートのテーマだった時などは,自分がタバコを吸うので,自己中な議論になり,みんなに迷惑をかけてしまったかもしれません。

試合の際にも,連絡の不徹底から発表内容に齟齬をきたしてしまうことがありました。やはり講師の方が言っていたように報告・連絡・相談が大事だと思います。
 ディベートを行う際に最も重要なことは,論理的思考で物事を多角的・多面的に捉え,短時間でポイントを整理し,感情的にならずに相手(審査員)を説得していくことであるとのことでしたが,演習問題や試合を通じて私はこの論理的思考がまだ十分に出来ていないということを痛感しました。
物事の本質部分まで突き詰めて考えていかないとどうしてもうわべだけの議論・水掛け論になってしまいます。私はどうしても自分にとって都合の良い方・簡単な方から物事を考えてしまう傾向があるので,もう一方の立場から物事を検することを今後は徹底していきたいと思います。

また,私は短時間でポイントを整理するのが苦手で試合の際には悪戦苦闘しましたが,何回か試合を行ううちに「聞きながら考える」コツのようなものを掴むことができたので,今後の会議やプレゼンなどの際に積極的に活用していきたいと思いますそして時間の貴重さを改めて認識しました。
 ディベート研修自体が非常に濃密で,僅か2 日間でしたが多くのことを学ぶことが出来ましたし,ディベートの試合を通じて2 ,3 分の短い時間でも多くのことが出来るということを体験しました。

また,参加者の皆さんのオフタイムの利用方法等もつぶさに拝見して,自分ももっと時間を有効に利用すべきであると反省した次第です。
今後は,今回の研修で得た経験を活かして,今までよりもさらに自信を持って仕事をさせていただきます。

※誤字脱字・句読点の過不足,慣用表現等の間違いがありますが,原文で掲載しています。

 彼は研修で何を学習したのですか,その数は何個ですか?上記の文章を読み返すことなく,記憶している情報で下記に解答してください。

解答欄:     個  それは,何ですか? キーワードを書いてください。

●演習:読み比べ2

 リライトした文章を次頁に示します。同様に,黙読,線を引かず,そして,前の文に戻らないでください。研修で何を学習したのか読み取ってください。

研修受講報告書(B)

氏名:リライト

 2日間のビジネスディベート研修を受講いたしましたので,ご報告します。この研修で私が得たことは,多角的視点,コミュニケーション,時間管理の大切さです。

 1点目の多角的視点とは,様々な立場から問題を見ることです。演習問題や試合を通じて,自分自身この多角的視点がまだ身についていないことを痛感しました。私は自分に都合の良い方,簡単な方から物ごとを考える傾向があるので,うわべだけの議論・水掛け論をよくしていました。今後の業務では,賛成論,反対論の根拠をしっかり受け止め,思考することを徹底したいと思います。

 2点目のコミュニケーションとは,組織の中での意思伝達と合意形成です。グループで意見を集約する作業は予想以上に困難でした。施設内の禁煙についてグループで議論したときは,論理よりも感情が先走り,本質論ができませんでした。実際の業務において感情的になってしまうと,適切な接客やサービスが提供できません。今後の業務では,接客や報告・連絡・相談などで,求めている本質を理解できるように,意識したいと思います。

 3点目の時間管理とは,時間を効率的に使って作業を進めることです。ディベートの試合を通じて2,3 分の短い時間でも多くのことができることを体験しました。短時間でポイントを整理するのが苦手なので,演習では悪戦苦闘しました。しかし,何回か演習すると,「聞きながら考える,ポイントを整理する」コツをつかめるようになりました。今後の業務では,短時間で集中して思考するノウハウを日常の業務で活用したいと思います。

以上,今回のビジネスディベート研修は,多角的視点,コミュニケーション,時間管理の3点が,仕事をしていく上での有益なツールとなりました。今後は実務の中で,研修で学んだ内容を忘れずに活用したいと思います。

 彼は研修で何を学習したのですか,その数は何個ですか? 上記の文章を読み返すことなく,記憶している情報で下記に解答してください。

解答欄:     個  それは,何ですか? キーワードを書いてください。

 さて,Aさんの報告書はポイントのキーワードも数も不明瞭でした。リライトした文章では,3つともキーワードが記述できたことでしょう。
 分かりやすい文章を書くためには,守るべきルールが7つあります。しかし,誌幅の都合上,今回は必須の3つのみ簡単にご紹介します。
 

●ルール1:最初に総論を書く

  • 文章は,「総論」「各論」「まとめ」で整理する
  • 最初に総論を書く。総論は目的
  • のパートと要約パートで構成される
  • 目的のパートは,「現状and /or背景」「問題点and/ or必要性」,そして「目的」の順で書く
  • 要約のパートは,結論・要約文から書き,それを支える重要な情報を列挙する
  • 30秒で主旨が分かるように,簡潔かつ具体的に7~9文で書く(図表1 参照)
最初に総論を書く

目的のパート(現状・背景,問題点・必要性,目的)
 現状・背景:○○県○○○市が,職員の「ヒゲ禁止」を明文化し,新聞やTVで話題となりました。たしかに,執務時間はプライベートな時間ではなく,全くの自由な服装をしてよいわけではありません。しかし,ヒゲ禁止は行き過ぎであるとの声が挙がっています。
 問題点・必要性:当市役所でも,ヒゲをはやしている職員がいるため,今後の職員課の対応を検討すべく,
 目的:ヒゲに関する規定を調査しましたので,ご報告いたします。

要約のパート:結論,重要な情報A,B
 ヒゲについての明確な規定はありませんでした。1.総務省公務員課では「全国の自治体の規定を把握しているわけではないが,髪形やヒゲなどについて規定したり,規定が問題になったりした例は,これまでに聞いたことがない」としています。2.○○県弁護士会人権擁護委員長の□□弁護士は「無精ヒゲはともかく,きれいに整えられたヒゲは社会的に容認されている。全面禁止は人格権の侵害に当たる恐れがある」と指摘しています。

研修報告書とは違う例で総論の文章を上に示します。ルール1 についての詳細を確認してみましょう。では,2つ目のルールです。

●ルール2:段落ごとに情報を整理して書く

  • トピック・要素ごとに,情報を分類し,展開順を検討する
  • トピックが変わったら,段落を変える。それ以外は改行してはならない(図表2参照)
段落ごとに情報を整理して書く

 例文で有効性の確認をしてみましょう。リライトしたBの文章は,第2段落が,「多角的視点」,第3段落が「コミュニケーション」,第4段落が「時間管理」というトピックで分類,整理されていました。反面,Aの文章は不規則に段落が作られていました。次に,3つ目のルールです。

●ルール3:段落の先頭に要約文を書く

  • 要約文は,それだけで言いたいことが分かるように,段落を総括して具体的に書く
  • 要約文の主語/主体は,その段落のキーワード・トピックにする
  • 説明の文は,データや理由を用いて論証したり,事例を述べたり,言い換えたりして,内容を強調する(図表3 参照)
段落の先頭に要約文を書く

 例文で,有効性の確認をしてみましょう。読み比べをしたBの文章の各論では,各段落の先頭が要約文,つまり何を学んだかという主張となっています。また第2 文以降が事実,第3文が考察,第4文が今後の業務での活用について記述されました。

●まとめ

論理的に文章を書く研修を企画する際は,このような体系立てした理論と演習,そして,添削がセットになっているカリキュラムを選択するとよいでしょう。

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関連情報

著者:別所 栄吾(べっしょ・えいご) 
株式会社BCL代表取締役 https://www.bzcom.jp
 
▶信条「知らないことはできないし,選択肢にすらならない。だから教育は大切なんだ。
近著:『あなたの職場は,なぜ問題ばかり起こるのか?』『会議は長いのに,なぜ何も決まらないのか?』『あなたの話は,なぜ伝わらないのか?』(日本経済新聞出版社)講座:「実践ロジカル・コミュニケーションスキルズ」「成功するミーティング・折衝スキル」「ビジネスディベート」(日経ビジネススクール)ほか

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