誤解が多いサマータイム。まず、制度の正しい理解が必要です。

「サマータイム」について、メディアの説明で、あまりにも誤解が多いので、ここで確認しておきたいと思います。制度の説明は事実になるべく事実に即して書きますが、導入の是非の判断は私見です。ちなみに、サマータイムはディベートの論題としては定番です。一番重用しています。

=目次=

 1.サマータイムは、時差勤務ではない。
 2.  〃   は、残業を増やさない
 3.  〃   は、諸外国との調整を困難にしない(一部はする)。
 4.  〃   は、体調を崩さない
 5.  〃   の経済効果
 6.東京オリンピックとサマータイム

1.サマータイムは、時差勤務ではない。

一人だけ、あるいは特定の会社だけが、早く出勤するのは、サマータイムではありません。サマータイムは個人のリズムを変えるのではなく、社会のリズムを変えるのです。したがって、サマータイムを導入すると、4月は会社や子どもの学校、電車などが一律に、「太陽の進む速度」に対して1時間、前倒しになります。午前2時のときに、時計が時を指すように+1時間進めます。10月にこの逆をやるのです。深夜にわざわざ起きて変更するのではなく、寝る前に時計を動かしておけばよいのです。時刻の変更は日本一律です。例外はありません。

そのため、サマータイムで労働時間が増えたり、子どもと時間が合わなくなったりすることはありません。一律ではなく、むしろ時差勤務(これを勝手にサマータイムと呼ぶから、皆が混乱するのです)をするから、他の人と合わなくなるのです。北海道の企業・組織で以前、サマータイムの実証実験をしました。この時点でお分かりですね。一部で実施したら、時差勤務です。参加しない企業、学校がずれるのです。

2.サマータイムは、残業を増やさない

「明るいから、帰宅できない、残業が増える」と言うのは事実に基づいていません。労働時間はどれくらいの仕事が残っているかです。仮に、外が明るいと残業をするというのならば、夏至のときに労働時間が長く、冬至の時が労働時間が最短となるはずです。体感的におかしいですし、毎月の勤労統計でも、月別の労働時間の平均をみても年間で10分も変わっていません(資料参照)。ただし、サマータイムを有効活用しようと考える人人がある程度はいて、有効活用しようと、遊びに来られる側の労働は増えるかもしれません。

しかし、サマータイム導入で、映画やデパートに買い物に行くとは考えられません。外が明るいから映画を見に行こうとは考えられません。見たい映画があれば暗くても、明るくても行きます。デパートなどでの買い物も同じです。繰り返しますが、明るさと比例関係にあるのならば、いまも夏至のときが映画やデパートの売り上げが最大で、冬至が最少になるはずです。

※戦後間もなくのデータは、労働時間を減らしていた可能性が見えます。制度の導入年の前後で労働時間の減少、廃止年の前後で、労働時間の増加が見えます。誰が残業が増えたと言ったのか?不思議です。クリックevi_daylight_saving_time.pdf

3.サマータイムは、諸外国との調整を困難にしない(一部はする)。

サマータイムを導入すると、諸外国との調整が必要になると指摘されることがあります。現在導入している欧州や米国など70か国以上とは、同期するので調整が不要になります。中国や韓国などアジアの多くの国と調整は必要になります。航空機のダイヤなども現在のサマータイムの切り替え時に、調整をしています。米国、欧州線でむしろ同期することになります。もちろん、現在の調整をすることを前提に廻しているところは問題になります。

4.サマータイムは、体調を崩さない

先に説明したとおり、労働時間が変わらないので、基本的には何も変わりません。当然、サマータイムで余暇も増えません。寝るタイミングが年2回、早くなったり、遅くなったりするだけです。切り替えのタイミングで配慮しないと、年に1回、1時間だけ短くなります。戻すときは1時間長くなる。体調の変化は、ほとんどないはずです。いわゆるサラリーマンの場合で考えてみましょう。平日床に就く時間、起床する時間、休日の起床する時間と就寝する時間を考えてください。タイミングが1時間ではなく2時間とかずれることもありますし、睡眠時間も長短の変化があります。でも、私たちは体調は崩していません。本当に「1時間でもタイミングがずれると、体調を崩す」と言うのならば、サマータイム導入以前に、私たちは毎週末、体調をくずしていることになります。睡眠時間は同じです。百歩譲っても、「早寝早起き」に近づくだけです。

5.サマータイムの経済効果

ほとんどないと思います。明るさゆえの経済効果は皆無に近いです。ただし、変更に伴う広報、システム改修は発生すると思います。欧州などサマータイムを長年実施してきた国には、制度の説明は不要です。開始と終了の広報だけで済みます。しかし、日本が戦後まもなくサマータイムを実施していたことを知る人は少ないです。したがって、丁寧な広報が必要になります。サマータイムと時差勤務を混同している記事を否定して、制度を正しく理解してもらうのは、大変かもしれません。

また、インターネットに接続しているパソコンは、現在も時刻の同期が取られています。しかし、基幹業務ソフトや銀行の送金システムなどシステムの改訂が必要です。Y2KのようにIT業界には、プラスになるかもしれません。一番嫌なケースは、普段の保守契約の一つでカバーしてくれと、代金をもらえないことです。

6.東京オリンピックとサマータイム

東京オリンピックで実施すると、欧州などで、サマータイムの1時間分でも放送時間が早まるので、その分、視聴率などが上がり、放送局などは嬉しいかもしれません。ピョンチャンでも、欧州等での放送時間の関係で深夜に競技をしていたのは、記憶に新しいでしょう。

アスリートには、暑さしのぎには良いと思います。そもそも、8月に実施するのではなく、以前の東京オリンピックのように10月に実施する方がよいでしょう。年間の競技スケジュールがあるので、8月にやらざるをえなくなっている方が問題かもしれません。

まとめ

以上、いろいろ説明をしましたが、デメリットは多くないのですが、メリットもないと思います。アスリートがほんの少し涼しい。すると、得られるメリットがない。むしろ、サマータイムと言う制度を正しく理解せず、時差勤務と混同して、多くの人が混乱するだけかもしれませんね。