第3回 評価育成面接

以下は、財団法人関西生産性本部の機関誌「KPCニュース」2009年9・10月号での連載記事をウェブで公開しています。

本文

概要

過去2回の講座で人事考課の各種ルールについて理解を深めてきた。今回は、評価結果をどのように部下と話して、評価結果を合意し、また改善や育成に連動させていくかを学習する。

本年度の講座の全体像は、1回目にご案内しているが、各回のテーマを再度下記に記すので、再度確認して欲しい。本連載は、人事考課から育成面接、次期の目標設定面接、そして日常のOJTやマネジメントまで管理職に必要とされるハウツーを一連の流れに即して説明していく予定である。(図1参照)特に第 1回目で説明した人事考課の理論は、考え方の源泉となるので、特に確認を深められたい。

  • 第1回:人事考課入門
  • 第2回:人事考課ミニテスト
  • 第3回:評価育成面接
  • 第4回:コンピテンシーと育成
  • 第5回:目標設定面接
  • 第6回:OJTとコーチング

図1:講座の全体像

評価育成面接の進め方

評価育成面接を効果的に進めるには、1.面接の原則を守ること、2.公正な評価と育成プラン、3.部下と評価結果を合意するコミュニケーションスキ ルの3つが成功の鍵を握っている。以下に原理・原則としての考え方と事例を紹介する。(図2参照)なお原理原則を勉強したことがある方、お急ぎの方は、部下と評価結果を合意するコミュニケーションスキルに進んでいただきたい。

図2:第3回「評価育成面接」のポイント

面接の原則

育成面接の原則はGet and Giveの原則を守ること、そして褒めること・感謝することである。これらは、評価育成の原則であることはもちろんだが、日常の部下との対話でも基軸となる考えかたである。

Get and Giveの原則

面接ではGet and Giveの原則を守る。つまり、まず部下の話や考えを聴き(Get)、その後、部下の話に対応していく(Give)という順番を守るのである。目標に対する評価結果をいきなり管理職が伝えるのではなく、部下の自己評価を最初に聞いて欲しい。これは評価育成面接に限らず、日常的にこの原則は守って欲しい。

部下に質問することは、育成の視点からも効果が高い。部下の指導や業務対応について細かな指示を出す人ほど、「私の部下は、指示待ち族で言われたことはヤルが、自主性が無い」と言う。更に「どうすれば部下が自主性を発揮するのか、どう言えばよいのか、その方法を教えて欲しい」と続けられる。もうお分かりだろう。言い過ぎである。これでは部下はいつまでたっても成長しない。それどころか、少しでも管理職のお眼鏡に適わなければ、お小言とともに、細かな方法を指導されるので、自ら工夫して行動しないよう部下は学習してしまう。だから、言いたいことを質問に置き換えて、部下に現状認識や対策について、まず話をさせることから始めて欲しい。そして認識のズレや対策の過不足を共に話し合って解決策を決めて欲しい。確かにこれは時間が掛かる。遠回りのように見えるだろう。しかし具体的な事実をつかみ、問題解決のプロセスを共に考えない限り、部下の育成は図れない。管理職に求められているのは、専門職として優れた判断をすることだけでなく、部下育成も管理職の重要な業務である。言い換えれば、後進を育てないと、あなたも昇進できないのである。

反対に質問ではなく、ガツンと言うべき時もある。それはベテランが手を抜いていることを見つけた時である。「まあ、これくらいなら良いだろう」と手を抜いている時は、質問という回りくどい方法を使わず、その場で指導することが必要である。その場とは、みんなの前でという意味ではなく、すぐにという意味である。他の部下やお客様の前では、原則として叱ってはならない。しかし、生命や安全にかかわる内容は、緊急性が上回るので、本当にその場での指導が必要となる。それとて言い方に気をつける必要がある。つまり、大きな声で叱ると、むしろ足などを滑らせて、災害発生の引き金になりかねない。

しかし一番困る管理職は、部下の話を全くGetしない人である。つまり「現場のことはよくわからないから」と、部下からの相談をそもそも聞かなかったり、最後に判断や責任から逃げ出したりする管理職もいる。これこそ本当の「名ばかり管理職」である。細かすぎる管理職も迷惑だが、この名ばかり管理職は、部下の心を壊し、組織もダメにしてしまう。アセスメントや過去の業務実績から、本当に管理職に適しているか、登用前に確認しておくことが必要である。

褒めること・感謝すること

部下に正しい行動を理解させ、定着させるには、行動を具体的に褒めることである。年上の部下には褒め難いので、感謝の意を示すことである。この説明をすると、「私の部下には褒めるところがありません」という言葉がよく返ってくる。良いところを褒めることはもちろんだが、出来て当然のレベルの内容を褒めて欲しい。すなわち「少々問題はあったけれど、ほぼ期待どおりの結果を残した」場合に褒める。(図3参照)また「成績考課の結果は、期待を下回り、評価結果Cとなったが、そのプロセスは適切であった。今回は外部要件で目標未達になった」場合は、プロセスが褒める対象となる。いずれにしても面接の時だけ話すのではなく、日常からの観察、報連相がなければ、具体的に褒めることはできない。出来て当然の内容でも繰り返し褒める。あるいは感謝の意を示すことで、正しい行動が定着する。しかし「ベテランだからそれをして当然」と思い、何もコメントしないと、正しい行動をせず手を抜くようになる。このように褒めたり、感謝の意を示したりすることは至極常識的だが、継続することはなかなか難しい。(図4参照)

図3:指導・育成の誤解と正しい行動

図4:褒めることの大切さ

公正な評価と育成プラン

管理職が部下を評価する時、育成の義務が生じる。評価と育成はセットである。3年間同じ考課項目がCの場合、管理職の役割である指導・育成の考課も低く評価されることがある。

公正な評価

公正な評価については、連載の第1回と第2回で学習したので、評価方法は要旨のみを図で示す。(図5参照)ここでは特に考課項目と褒める、改善を促すポイントの関係を確認していく。成績考課は、結果だけでなく、正しい職務行動を過不足なく実施できていたかを確認し、褒めたり、改善を促したりする。能力考課では、仕事をつうじて発揮された能力の推移を評価する。つまり1年前と現在でどれだけ能力が伸びたかを褒める。また考課時点での保有能力を具体的事実や内容に即して評価する。時代と共にITの技術などは変化するので、部下のスキル・能力が陳腐化していないかも確認する必要がある。最後に情意考課は、仕事に取り組む意欲・姿勢と努力度を評価する。イメージではなく、具体的事実や行動と結びつけて評価することが大切である。

図5:評価の方法

部下の自己評価と管理職の評価が食い違う原因は主に3つあるので確認しておこう。

  1. 目標があいまい。つまり期待値Bのゾーン自体が不明確
  2. 目標面接時の合意が不十分
  3. 結果にとらわれ、プロセスをみていない

目標がそもそも曖昧であることがもっとも多い。特に期中での目標変更を曖昧にしているケースがもっとも多い。経済環境や顧客事情などで目標が変わること は、特別なことではない。変更や修正時には、必ず面接をして新しい期待値(Bのゾーン)を確認して欲しい。なお、この内容は次号以降で再度触れる予定であ る。

育成プラン

部下の良いところや興味関心のある部分は更に伸ばし、正しくない行動には、改善を迫る必要がある。良いところを伸ばすには、褒めることであることはすでに説明した。更に部下が自発的に学習したい内容、担当したい仕事があるのならば、組織の事情が許す限り、それを伸ばせるよう管理職は支援をするべきである。しかし現実は、部下の希望とは違う内容を担当することも多い。このような場合もGet and Giveで対応する。すなわち部下の興味関心を尋ね、理解する。その上で、業務上必要な役割や伸ばして欲しい能力を説明し、それが組織や顧客からの期待であることを説明する。そして能力開発が進むとどうなるか、また役割がどのように広がったり、深まったりするかを説明する。この期待は、1年の短期の計画と3年以上の中長期の2つが必要である。すなわちこれが部下のキャリアデザインとなる。言い換えれば3年後、5年後の部下のあるべき姿から逆算して、この1年では何を伸ばして欲しいか、3年かけてどうなって欲しいかを考え、共に考えることが大切である。

また面接の中で、人格や性格について育成を図ろうとする管理職がいるが、それは間違いである。部下は子供ではなく大人なので、「心を入れ替えて仕事をしろ」といわれても、変わらない。正しい指導は、褒めることであることは、これまでに繰り返し説明をしてきた。(図6参照)しかし遅刻の多い部下には、「社会人としての自覚を持て」と言いたくなるだろう。この場合も考え方ではなく、「行動」に焦点をあてて指導して欲しい。遅刻しないためには、「何時の電車に乗ればよいか?」「それでは乗り遅れたら、即遅刻にならないか? では余裕を持てるのは何時の電車に乗ればよいか」「その電車に乗るには何時に起きればよいか」というように、具体的な行動を話し合って欲しい。指導育成する際は、性格改善を迫るより、行動改善を迫るほうが効果的である。しかし行動改善策を管理職が示してはならない。つまり、「8時の電車に乗れ、そのためには7時に起きろ」と管理職が言ってはならない。言いたいことは質問に置き換えることで、部下はより思考することになる。また自分で「毎朝7時に起きます」で回答することで、発言内容により責任を持つようにもなる。

図6:指導・育成のポイント

部下と評価結果を合意するコミュニケーションスキル

これまでの説明で評価育成をするための原理原則はご理解いただけたと思う。原理原則を実践するために「評価育成面接の6つのステップ」を次に説明する。会話の対応例などを確認して、各ステップに落とし込んで実践して欲しい。特に部下の数だけ面接準備シートを作成して、部下一人ひとりの現状や目標、期待に即して丁寧に作成して欲しい。言い換えれば、ワンパターン、マンネリは最悪な面接である。

評価育成面接の6つのステップ
  • Step1.リレーションづくり
  • Step2.評価の合意
  • Step3.原因の解明と合意
  • Step4.強化・改善、育成点の合意
  • Step5.育成点の合意
  • Step6.ねぎらいと期待
評価育成面接の6つのステップ
面接のステップ対応例
Step1
リレーションづくり
1.リレーションづくり
  • 聴く姿勢をとる
  • 信頼関係をつくる
  • 話しやすい環境をつくる
(会話例)
「今期は、がんばったなぁ...」(良くなかったら下記)
「いつもありがとう。君のお陰で助かっているよ。」
「長男はもう小学生だったよな。」
「新しい車の調子はどうだ?」
Step2
評価の合意
2.部下に目標達成度の評価とその根拠を質問する
  • 目標の確認をする
  • 課題・目標に対して部下の自己評価を聴く
  • 結果だけではなく、プロセスにも耳を傾ける
(会話例)
「今期の目標はどうだったか、まず君の考えを聴かせてくれないか?」
「結果だけでなくプロセス。つまりどんな風にそのことを進めたのか、もう少し具体的に説明してもらえるかなぁ」
3.管理者の評価とその根拠(事実、人事考課のルール)を話す
  • 課題・目標に対して、目標で決めた基準に従い明確に述べる
  • 達成の場合は、褒める
  • 部下の感想を求める
(会話例)
「君は~については十分に力を発揮してくれた。期待どおりだったよ。/期待以上の成果を収めることができたよ」
「~は頑張ったね」
「君はこの結果をどう考える?」
Step3
原因の解明と合意
4.その評価になった原因(具体的な職務行動事実)を質問し、考え、応えさせる
  • 主に課題・目標について話す
  • 具体的、明確に伝える
  • 気づかせて改善を促すことも
  • できる限り能力考課・情意考課と連動させる。
(会話例)
「この点については、こういうこと(事実)があったが、それについて、君はどう考える」
「君はこの問題の原因をどう考える?」
 
(ポイント)
優先順位をつけ、言いたいことを質問にする
5.管理者の考えを伝える
  • 結果(課題・目標など)⇔能力考課・情意考課
(会話例)
「この点については、こういうこと(事実)があったが、君はどう考える」
「私はこの問題の根本原因は、...と考える。どう思う?」
 
(ポイント)
重点箇所はどこかをあらかじめ想定しておく
Step4
強化・改善の合意
6.次期を見据えて、強化する行動について話し合う(プラス面)
  • 今後、伸ばして欲しい能力を具体的な業務を通じて示し、業務内容と能力のつながりを実感してもらう/意見交換する
  • たとえば、昇格間近の部下の場合にどのような行動・能力などが求められますか(単年度だけでなく、複数年にわたる計画も必要です)
(会話例)
「~についてはどう考える?」
「君には、管理者になってもらいたい。でも今のままでは足りないところがある...」
7.今期を振り返り、改善して欲しい行動について話し合う(マイナス面)(会話例)
「君に改善してもらいたいことは、~点ある」
今後、改善して欲しい能力を具体的な業務を通じて示し、業務内容と能力のつながりを実感してもらう/意見交換する
Step5
育成点の合意
8.育成点を合意する
  • Step4の合意内容の確認
  • 方向性、業務内容、スキル、それらのレベル、スケジュールなど
  • 面接の前に管理者は、自分の考えを具体的に整理しておく
(会話例)
「今回の話をまとめてみると...」
「3年後、私の代わりを果たせるようになるには...」
「○○までに、△△を□□するために、abcをxxする。具体的には、」
Step6
ねぎらいと期待
9.管理者からの期待を言葉にする(会話例)
「君には、○○について期待しているよ」
「これからもよろしく頼むゾ」
「一緒にやっていこう」
「あなたと仕事ができて嬉しいよ/です」

まとめ

評価結果で部下と合意し難いのは、曖昧な目標設定・修正が原因であることが確認されたと思う。また指導・育成には、行動面を意識した話し合いがポイントであることもご理解いただけたと思う。次稿はコンピテンシーを用いて、能力開発・育成を考察していく。

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